3/25日記(こんまり)

 今更こんまり本を読んだ。日本でも世界でも今こんまりは第二次ブームだと思うのだが、私の周りに限って言うと一次ブームの時こんまりメソッドを実践してたのは女性、特に主婦や年配の方が多かった。例えば女友達から「今ときめかないもの捨ててるんだー」とか、「母さんが片付けにハマっててときめかないもの捨ててるんだよね」という話はよく聞いた。男友達からは「うちのおかんも今モノを捨てまくってる」という話なら聞いたが、自身が実践してるという話は聞いたことなかった。

 しかし、今回のブームでこんまりを実践してるのは勤労世代の男女が多いように思う。なんか「グラスフェッドバターコーヒー」とか「ファクトフルネス」の流行り方にも少し似てる気がする。

 今回のブームに一役買ったのがNetflixの番組"Tidying up with Marie Kondo"で、私の周囲の勤労世代の人は結構Netflix好きが多いからという気もする。あと、もしかすると日本での第一次ブームではお昼のワイドショーとか女性誌で特集が組まれがちだったのかもしれない。まあこんなのはどうでもいい個人の印象で、別に統計を取ったわけでもなくあくまで私の周囲に限った話であることを強調しておく。

 

 で、本の内容だ。「はじめに」を読んでなんとも言えない気持ちになった。言葉を選ばずに言えば、非常に胡散臭い。冒頭の数ページで、こんまりメソッドに従って片付けを行えば二度と部屋が散らからないばかりか人生すら好転する、と書かれているのだ。信頼できる周囲の友人や知人が「こんまりの片付けは非常にロジカルで効果的である」と推薦していなければこの時点でページを閉じ、本をこんまりしているだろう。

 

 本は平易な表現で万人に分かりやすく書かれており、家事や夕ご飯の支度をしながら二時間程度で通読できるようなものだった。参考にできるとは思ったが、実践したいかと言われると難しい。私に限って言うと、この本の内容だけではあんまりモチベートされない。Netflixの彼女の番組を見た時は「片付けすげー!片付けイエー!今すぐ家中の服を集めろ!」みたいな気持ちだったのだが。

 というのには二つ理由がある。一つ目は服の片付けについてである。私はハンガー愛好家で大体の服を引っ掛けて収納しているが、こんまりは畳むことの良さをかなり強調して説いている。畳む収納はこんまりメソッドの中でかなり重要な行為である。まあ分かるけど正直めんどくさい。

 で、二つ目が「はじめに」と「第5章」の内容だ、これはまさに読者を実践者とするべくアジりまくって片付けの効能を解くモチベートの章なのだが、私にとってはなかなか現実味がないなという印象を受けたのだ。なんと言えばいいのか、はじめの出版社の影響があるように思う。よく指摘されている「宗教性」については、スピリチュアル系に多少の目配せはしつつも一線を画しているという印象ではあるし、こんまりは片付けの良さを滔々と述べているだけなのだが、「おうちにご挨拶を」「モノとのご縁は貴重で尊い」「今向き合うか、いつか向き合うか、死ぬまで向き合わないか」と言われると、「え、アタシ今オルグされてる?」という気持ちになってどこか抵抗してしまう。読者、特にエンジニアの方はこの本の内容を彼らの使う言語に「翻訳」してる印象が強かったのだが、その理由も分かるわという感じである。

 ただ、そのあたりを気にしなければ分かりやすくて良い本だった。この辺のことは、片付けを「なんかスピリチュアル系に親和性のある行為」ではなくロジックを持った「セラピー」として捉えるとしっくり来る(すでに指摘されてることではあるが)。本を読んでいるだけでは気づきにくいが、Netflix版ではこんまりの片付けは家族や個人の問題を癒やすセラピーとしての側面が強調されていた。これがtherapeuticなものを求める欧米人にハマったという話を聞いたが、なるほどーという感じである。

 

 それから意外だったのは、通読後こんまりにかなり好感を持ってしまったことだ。こんまり、Netflixでは典型的日本人という感じなのに、実際は考えも独特で面白いし、過去のエピソードも結構変わっていてなによりキュートである。本に時々挟まれていたこんまりのエピソードはどれもかなり面白かった。きっころのTシャツを大事にしてるくだりは特に面白かったし、片付けすぎて病院送りになる話もやばい。

 

 というわけで、こんまり本の読書体験はかなり独特で面白いものだった。私に限って言えば、Netflixで気持ちを高めて本でメソッドを学ぶという順番は正しかった。逆だったらうまく気持ちを高められなかったかもしれない。このあとさらにNetflixを再視聴して気持ちを高め直して片付けをすれば、上手いこと掃除できそうである。とりあえず、服を畳むかどうかは一旦保留しておく。

 

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