11/30日記

 薄暗いバーで飲んでるだけの写真に「仲間と悪だくみ。笑」とキャプションを添えてフェイスブックに投稿するとか、「おもしろきこともなき世をおもしろく」を座右の銘にしてるくせにそれが高杉晋作の辞世の句であることを知らないとか、そういう自称起業家を揶揄する言葉はインターネットで結構見かける。これまでそういう人の存在は「マックで女子高生が……」と似た幽霊みたいなものだと思っていたのだが、最近になって実在することに気づいた。というか、こんなテンプレ通りのヤベー奴いる?というとんでもない人に遭遇してしまったのだった。

 「夢先案内人(仮)」みたいな謎の自称……、技術屋を名乗るのに語るのは精神論ばかり……、いいねの少なさに釣り合わないフォロワー数……、なぜか「面白いかどうか」をやたらと気にする……、役満!という感じの上、有名人のサロンとか起業塾出身なのが丸わかりでどこか下請け感が拭えない。有名人のコラムやツイートをRTしてんのは人脈アピールのつもりだと思うが、印象としては怪しいマルチの宣伝をしてくる末端の人間と似たようなものである。「会社の奴隷を脱却しよう」とは一体。

 ツイートの中身もペラッペラだ。カタカナ語で装飾した中身のない内容を連投し、国語教育の重要性を逆説的に教えてくれる。そして、カリスマ性の深刻な欠乏を落合陽一のツイートやイチローのアンオフィシャル名言botを頻繁にRTすることで補ってる。なんつーか、スケールするのは夢ばかりという状況である。そんなんでよく他人にDM送ってきやがったなお前。

 うわ、本当にいるんだな……と、都会で狸を見つけた時みたいな驚きがあったが、よく考えてみると確かに事業内容があやふやな学生スタートアップの「仲間最高!出会いに感謝!」は昔からよく見てたので、その層が順調にスライドして起業だのサロン商売だのをはじめたらそうなるのは不思議でもなんでもない。


 こういう人たちは一体なんなんだろう。世の中では「意識高い系」にまとめられてしまうのだと思うが、高いはずの意識がどこかズレてるというか、現実が見えてないというか。人脈や努力に対する期待が妙に強いようだが、肝心の人脈形成や努力の方向性を誤っている感じだ。どれだけTwitter営業に力をいれても、仲間うちでのイキった啖呵ツイートだけでは世界は変わらないしメシは食えないのである。仮にもエンジニアを名乗って商売するのだとしたら、夢を語るだけではなくて地に足のついた技術の話をしてないと信用できないよな、とか当たり前のことを考えてしまう。

 まあサロン商売に騙されにいって満足してる分には別にいいが、自分が胴元になるべく有害な営業をはじめるのは迷惑なのでやめてほしい。